美しさと禍々しさを兼ね備えた静謐な作品。救いのない世界の中で、青い月あかりに照らされるガラス張りの収容所や、セリアズの弟の歩く庭などのシーンが忘れられないくらい美しい。演技には当時から賛否両論あるようですが、あの耽美でフェティッシュな将校を演じられるのは、若き日の教授しかいなかったと思いました。そしてまた、あの音楽を作れたのも。

リアルタイムでは知りませんが、20年くらいファンです。以前銀座シネパトスのレイトショーで観に行きました。特に最終日は広い世代のファンが集まって、すごい熱気でした。廃墟など生かした様式美の中に、若くて端正な佇まいの御三方の存在感。安珠さん演じる女のファッションや雰囲気が80年代そのものといった感じで、彼女との距離感が三者三様、そのまま時代との距離感を表しているような。現代のPVとは一味違った雰囲気を、またスクリーンで味わいたいです。

小学生のとき観ました。それまで、内容は理解できなくても、独特の言語感覚に惹かれて、繰り返し宮沢賢治を読んでいましたが、読書の喜びとはまた違う映画鑑賞に、この作品を契機にのめり込んでいきました。作品に寄り添い、しかし寄りかかることなく、独特の世界観を創り出した全ての制作スタッフに敬意を表します。細野晴臣さんの音楽が素晴らしいです。たくさんの方と、スクリーンで感動を共有できたらと願います。