TVアニメシリーズ「BEM」の後日譚であり、完結編としての「劇場版BEM」は、かつての「妖怪人間ベム」から脈々と続くテーマを現代色にうまく落とし込み、再構築された傑作とも言える作品です。TVシリーズ12話の後、ベム・ベラ・ベロの三人はどうなったのか。今はどうしているのか。彼らの行方を追うソニアは真相に辿り着くことができるのか。それらが順を追ってわかりやすく描かれています。基本ベムベラベロの三人一対の物語だった旧作やTVシリーズとは異なり、劇場版はベムが主人公となっています。序盤はシットコムのホームドラマのようなほんわかした日常の導入から始まり、見え隠れるする不吉な影に胸騒ぎを覚え、徐々に露わになっていく真相に驚きを隠せないままストーリーは進行していきます。このあと一体どうなってしまうのか、ベムたちは人間になれるのか、物語の行く末に観客は固唾を呑んで見守ってしまうでしょう。もはや、片時も目が離せないのです。クライムアクションとしても、上質なサスペンスドラマとしても魅力的な「BEM」シリーズ。主人公であるベムが長い旅路に果てに辿り着いたもの、人非ざる者が心通わした人間へ問う願いとその答え、明示された未来への決断に心が震えてしまう……もう大好きで大好きな大好き過ぎる作品なのです。90分という尺に濃密な物語を綺麗に詰め込めた素晴らしさに、感動を覚えます。(もっと長くても全然よかった、もっと観せてくれ！！！と今では思います) 2020年のコロナ禍初年度の公開だったこともあり、話題になる前に上映が終了してしまったのが残念でならないと常々思っておりました。今では円盤やサブスク等で鑑賞可能ですが、映画館の大画面で堪能する綺麗で迫力ある映像、大音響で体感する豪華且つ実力派揃いの声優陣の演技や音楽、濃密な人間ドラマ、心湧き立つバトルシーンをもっともっと劇場で観られて欲しい、沢山の方に味わってもらいたい。そんな作品なのです。なにより、自分もまた、もう一度この作品を映画館で観たい！！の気持ちでいっぱいかもしれません。再上映できるよう全力で応援したいと思います。またスクリーンに降り立つベムたちに逢える日を、その瞬間を心待ちにしております。